ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 組織でさがす > 総合政策局 > 政策推進課 > 平成30年度 県政に関する有識者意見交換会

本文

平成30年度 県政に関する有識者意見交換会

印刷ページ表示 ページ番号:0579448 2018年10月4日更新政策推進課
 岡山県では、県政施策の立案に当たり、各界の有識者から、新たな施策の方向性についてアドバイスを受けるとともに、専門家としての立場から斬新で先進的な施策提言をいただくため、県政に関する有識者意見交換会を開催しました。

平成30年度 県政に関する有識者意見交換会(7月4日)

開催日

平成30年7月4日(水曜日)

テーマ

「教育改革について」 ~エビデンスに基づく教育施策の推進~

出席者

岡山県知事 伊原木 隆太
慶應義塾大学総合政策学部 准教授 中室 牧子 氏 
埼玉県戸田市教育委員会 教育長 戸ヶ﨑 勤 氏

会議概要

〇主な提言等の内容
・国の第3次教育振興計画の策定の柱の一つが「エビデンスに基づく教育政策」。そのコアになる部分というのはデータ。データがある程度標準化されているということが非常に重要。ところが、どういうデータをとっているかは、市区町村や都道府県によってかなり異なり、その進捗状況も違う。
・もともと自治体の中にストックされているデータ、例えば就学援助とか生活保護を受けているかという家庭の状況と、教育委員会の学校関連の情報と、健康などの健康局が持っている情報との間に、接続ができないという問題がある。データ取得のかたちがどこかで、比較可能なかたちでやっていく必要がある。
・「不登校・長期欠席の改善」について、少人数学級は不登校に対する効果はすごく大きいが、いじめ・暴力にはほとんど影響しない。不登校に関しては、学級サイズを小さくするという方法は有効かもしれないが、いじめとか暴力に関しては、岡山県でもやっておられるように、警察とか、他の外部機関の手を借りないといけないのではないかと考えられる。
・学校の実情、特に親の経済力による学校格差の二極化はすさまじい。このことをしっかりと行政が把握することは、非常に重要なことで、その上で学校の実態に合わせて資源配分をする必要がある。今の国のルールでは、いずれの場合も先生一人当たりの生徒数の上限が40人と決まっているが、私はもう少し弾力化したほうがいいのではないかと思う。
・なぜ教育だけが、いつまでも勘に頼って、経験に頼っているのか。教師が多面的な学びの過程や結果を客観的なデータの一つとして、専門的な指導が行えるような仕組みづくりをしなくてはいけない。・中教審の中でEBPM(Evidence Baced Policy Making)の理論で、より効果的で効率的な教育施策の企画立案を行っていく観点だとか、国民への説明責任を果たしていく観点から、客観的な根拠に基づいた教育行政運営に取り組んでいくということは不可欠ではないかと語られており、数値化が難しいデータも可能な限り収集して、PDCAサイクルを構築していく必要があるのではないか。
・さまざまな産官学民の知のリソースを活用した教育改革ということで、戸田市の場合は、たくさんの会社や研究所、大学といったところとも共同研究をしている。
・どういう指導により、どういう成果が上がったのか、エビデンスを示し、学力を伸ばしているということをみんなで共有したり、または学校間を超えてピアレビューをやったり、さまざまな取り組みを行うことが大切。
・予算を取るというのは、市町村の教育委員会レベルだと、1万円単位でも大変であり、勘と気合いだけではなく、いかに数字で説明していくかが大切。
・研究費がついていない公募研究を進める場合、オープンデータにすることにより、応募してきた人をセレクションするようにすればよいのではないか。
・貴重なデータであれば、研究者は自ら寄ってくる。企業のほうは公教育のデータにアクセスしたいと考えている。エドテックなどという言葉がはやるようになった背景には、そういうサービスを自社で開発して、それをなるべく公教育の中に入れていきたいと思っている。できれば自治体と一緒に組んで共同研究をしたいというモチベーションのある企業はすごくたくさんあり、そういうインセンティブに人の動機付けをするような制度設計にしておくことは、お金をかけずによい成果を生む非常に重要な方法である。
・戸田市は、強いリーダーシップで全員に言うことを聞かせているというよりは、底上げのところに非常に地味に力を入れてこられたのではないかと思っている。この点も非常に重要である。
・EBPMには「作ること」「伝えること」「使うこと」という3つのステージがあると言われている。EBPMが過去日本で広がらなかった重大な問題は、「伝える」部分にあったのではないか。これは研究者も、行政の側も、自分たちがやっていることをいいことだというふうに、住民に自然と分かってもらおうとする考えは、もう捨てるべきだ。やはりちゃんとPRしていかなければいけない。
・将来の目標は、「オープンデータの教育への活用」。プラットフォームになる、比較するものがないので、今考えているのは、全国各地に埼玉県学調を広げようじゃないかと考えている。戸田市から教育長を派遣する教育長派遣事業まで含めて、点を面にして広げていけば、そういう成果もどんどん広がっていって、ビッグデータ化されていく可能性もあるし、信頼性も高まっていくのではないか。
・PBLと言われる教科横断的な学習やSTEM教育とかSTEAM教育(Science Technology Engineering Art Mathematics)というのは本当に大事。教科横断的で解答のないものというか、無から有をつくり出すというような学習をやっていかないといけない。
・第二言語習得の分野について、アメリカの研究者にヒアリングしたところ、指導力の高い外国語教員を育成するよりも、生徒たちの英語運用能力が高まるような指導法の開発を一生懸命やれと。すなわち、ビデオとかオンライン英会話とか、そういうツールを駆使して、英語がしゃべれない教員であっても、非常に高い英語運用能力を身に付けた生徒を育てることはできるとのことであった。
・民間企業との連携とか、ICTの活用とかについてだが、勉強する子はどんどんする一方、やらない子は何を言っても全くやらない。その差がものすごく広がり、エビデンスとして、明確にこういうことをやったから効果が上がってきたというところまでは、出ていない状況だ。
・企業との連携ということで、教育長3年間の間の取組についてだが、一つ一つ、「ああ、やって良かったな」という気持ちを重ねていくしかないのではないかなと思っている。小さな達成感というか、モチベーションを、いかに蓄積していくかということしかない。
・「学校におけるリーダーシップ」研究について、教育の非常に重要な問題は、教学と経営が分離されていないことだ。教学をやっていた感覚のまま経営者になってしまい、これがものすごく良くないことを生み出していると思う。
・全員にする必要はないが、マネジメントトラックに乗った方には、ティーチングの研修だけでなく、マネジメント研修が必要だろうと思う。